光合成細菌 RAP99 の抗炎症系試験(in vivo,in vitro)

抗炎症系試験

PPARγ経路活性化によるサイトカイン産生抑制評価試験

目的

RAP99抽出物および精製RAP99-LPSのTHP-1細胞を用いた15d-PGJ2を介するPPARγ経路活性化によるサイトカイン産生抑制効果を明らかにする。

試料と方法

1.被験物質

Rhodobacter azotoformans BP0899株(RAP99):凍結乾燥処理を施した粉体試料。

RAP99-LPS:上記RAP99から抽出精製したリポ多糖。

 

2.被験液の調製

(1)熱水抽出

 RAP99粉末を1.5mLのチューブに測りとり、サンプル20mgに対し1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌したのち、ヒートブロック上で100 20分間抽出を行った。抽出後、15000gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

 

(2)RAP99-LPS

 RAP99-LPSは注射用水に2mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温し、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、990µLの培養液に10µLを加えよく混ぜ、20µg/mLの溶液を調製した。

 

3.細胞

(1)ヒト末梢血単球由来細胞THP-1細胞株

 DSファーマバイオメディカル株式会社より購入したヒト末梢血単球由来細胞THP-1細胞株(ECACC No.88081201)を使用した。

 

(2)細胞株の選択理由

 THP-1細胞株は、種々のマクロファージ活性化物質に対する感受性が高く、マクロファージ活性化能の試験に最も一般的に使用されている細胞株の一つである。さらに、THP-1細胞株を用いたPPARγの活性化に関する報告*1があり、本試験で得られるデータを解析する際に参考にできる可能性が高いので選択する。

 

*1 He K, Yang Y, Tu Q, Luo Y, Ma R,;Alpinetin inhibits LPS-induced inflammatory mediator response by activating PPAR-γ in THP-1 derived macrophage.

European J. Pharmacol. 721:96-102. (2013)

 

 

(3)細胞株の保存及び解凍

 以下の方法で凍結保存した細胞を戻したものを試験に供した。

 DSファーマバイオメディカル株式会社より入手した細胞は37℃に加温した液で急速に解凍、予め新鮮な培養液を10mL加えた15mLコニカルチューブに移し、1000rpm5分間遠心分離を行い、上清をデカントにより捨てた。

 細胞の沈殿に、培養液5mLを加え静かに懸濁し、液をT25培養フラスコに移した。37℃の5%CO2インキュベーターで培養した。T75培養フラスコでの培養で細胞が5×105cells/mL程度になった時点で、得られる細胞懸濁液の一部を用いて細胞数と生存率を計測した。

 残りの細胞懸濁液を50mLコニカルチューブに移し、1000rpm5分間遠心分離を行い、上清をデカントにより捨てた。細胞の沈殿をタッピングにより崩し、凍結保存用のセルバンカーを1×106cells/mLになるように加え静かに懸濁し、1.0mLずつをセラムチューブに移した。

 細胞を入れたセラムチューブは予め冷蔵しておいたバイセルに入れ、-80℃で凍結保存した。凍結保存した細胞を戻し継代培養中の細胞を本試験に用いた。

 

4.対照物質

(1)陰性対照

 被験物質の希釈に用いる培養液を陰性対照物質とした。

 

(2)陽性対照

 PPAR-γのリガンドである15-Deoxy-Δ12, 14-Prostaglandin J2(以下、15d-PGJ2と省略する)を陽性対照物質とした。用量は終濃度10µMとした。

 

(3)調製方法

 15d-PGJ2の説明書に記載されている方法に従って調製した。培養液で終濃度の4倍濃度である40μMの溶液を用時調製し試験に用いた。

 

5.試験操作

(1)THP-1細胞の前培養

 THP-1細胞は、10%FBS100U/mLペニシリン、100µg/mLストレプトマイシン含有RPMI1640培地にて継代培養したものを用いた。培養はT75培養フラスコを用い、3日ないし4日毎に0.51×105cells/mLで植え継いだ。試験用に、T75培養フラスコ4枚に細胞を播種し、37℃の5%CO2インキュベーター内で培養した。

 

(2)検体処理細胞抽出液の調製

 THP-1細胞は、5×105cells/mL程度の細胞密度の状態のものを4枚 試験に用いた。

細胞をピペッティングにより分散し、50mLコニカルチューブに回収した。遠心分離により細胞(沈殿)を回収し、タッピングにより細胞を分散させた。培養液を10mL加えよく混ぜ、再度遠心分離を行い、細胞(沈殿)を回収した。

 細胞の沈殿に培養液を10mL加え、ピペッティングにより細胞を分散、懸濁させてから、一部をサンプリングして細胞数と生存率を測定した。細胞を4.0×105cells/mLになるよう培養液を加えて希釈して、24穴プレートの1ウェル当たり0.5 mLずつ加え、4倍濃度のGW9662 (40μM)含有培養液またはGW9662を含まない培養液を250μL加えた。添加後1時間、37℃、5% CO2インキュベーターでインキュベートし、その後、サンプルを含む培養液または含まない培養液を250μL加えて22時間、5% CO2インキュベーター中で培養した。

 22時間後、細胞を含む培養液を2mLチューブに回収し、培養液回収後のウェルに残存する細胞と培養液を回収するために、37℃に加温した新鮮な培養液を0.5mL加えてウェル全体に行き渡らせて、この培養液も同じチューブに回収した。再度、ウェルに0.49mLの培養液を加えた。細胞懸濁液を遠心分離(190×g (1000rpm)5分間)し、上清1.0mL1.5mLチューブに移し、-30℃で保存した。

 残りの上清を吸い取った後、新鮮な培養液を1 mL加え細胞を懸濁させ、再度遠心分離を行った。その後、培養上清をアスピレーターで除き、細胞にウェル内の培養液を加えて細胞を懸濁し、元のウェルに細胞懸濁液を戻した。細胞懸濁液に、4倍濃度のGW9662を含む培養液または培養液のみを250µL加え1時間インキュベートした後、15d-PGJ2を添加して培養した群のウェルには15-PGJ2を含む培養液を250μL加え、他の群のウェルには培養液のみを250µL加えて1時間培養した。

 その後、LPSp2枚のプレートに終濃度100ng/mLになるように加えて、22時間5%CO2インキュベーター中で、インキュベートした。その後、細胞を含む培養液を回収して遠心分離し、培養上清をELISA測定用として1.5mLチューブに回収し、-30℃で保存した。

結果と考察

 RAP99熱水抽出物、RAP99-LPSを処理した時のTHP-1細胞培養上清中のTNF-αおよびIL-6ELISA測定を行った結果、TNF-α産生に及ぼす影響について表1、図1に、IL-6産生に及ぼす影響について表2、図2に示した。

 LPS刺激した培養液群(NC)では、約50pg/mLTNF-α濃度に対して、GW9662で処理した場合には約36pg/mLと低下が認められた。15D-PGJ2処理では、NC群に比べてより高いTNF-αの値を示し、GW9662処理の場合では約15pg/mLと低い値を示した。RAP99 LPSの前処理では、用量依存的にTNF-α濃度の低下が認められ、GW9662処理群では、無処理群に比べてやや低いTNF-α濃度が認められた。

 LPS刺激した培養液群(NC)では、約10pg/mLIL-6濃度に対してGW9662で処理した場合に、ほぼ同程度のIL-6濃度を示した。15D-PGJ2処理では、NC群に比べてわずかに低い値を示したが、GW9662処理の場合のIL-6濃度はさらに低い値を示した。RAP99 LPSの前処理では、用量依存的にIL-6濃度の低下が認められ、GW9662処理群では、IL-6濃度の上昇が認められた。

表1. TNF-α濃度測定

1. TNF-α濃度測定

図中のグラフはn=3での平均値と標準偏差を示す。

*:p<0.05**P<0.01LPS(+)でのGW9662(-) vs GW9662(+)2群間のt検定

表2. IL-6濃度測定

2. IL-6濃度測定(対数表示)

図中のグラフはn=3での平均値と標準偏差を示す。

*:p<0.05**P<0.01LPS(+)でのGW9662(-) vs GW9662(+)2群間のt検定

 

以上の結果から、RAP99-LPSによる影響はTNF-αとIL-6産生では傾向が異なり、サイトカインの種類によって結果が変わる可能性が示唆された。また、RAP99-LPSIL-6産生抑制効果は、PPAR-γの阻害剤であるGW9662処理の場合に抑制効果が抑えられているので、RAP99-LPSIL-6産生抑制にPPAR-γが関与していることが示唆される。

 

【試験責任者:自然免疫応用技研株式会社】

酢酸ライジング法による鎮痛効果試験

目的

光合成細菌RAP99菌体の経口摂取による鎮痛効果の有無を確認するため、そのスクリーニング試験として広く用いられている酢酸ライジング法によって、ライジング症状抑制の有無を観察した。

 

試料と方法

(1)使用動物

ddY系雄性マウス(22~24g、5週齢)を日本SLC(浜松)から購入して使用した。試験においては1群6匹のマウスを用いた。動物実験は、東北薬科大学動物実験ガイドラインに従って行った。

(2)試料の調整

光合成細菌RAP99菌の凍結乾燥粉体を滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁し、マウスへの経口投与で1mg/kgの濃度に試料溶液を調整した。

(3)試料溶液の投与及びライジング数の測定

マウスに光合成細菌RAP99菌体 を 1 mg/kg となるように経口投与し、対照群にはPBSを10mL/kgを経口投与した。その20 分後に 0.6% 酢酸液を 0.1 mL/10g 腹腔内投与した後、0.6% 酢酸液投与 5分後から 15分間に起こるライジング数を測定した。

図1 光合成細菌RAP99菌試料溶液によるTNF-αの産生作用

図1 光合成細菌RAP99菌試料溶液によるTNF-αの産生作用

結果及び考察

光合成細菌RAP99菌体の経口投与を受けたマウスは、ライジング数が対照と比べて約半数となり、ライジング症状の抑制が認められた。これにより、光合成細菌RAP99菌体には鎮痛作用をもたらす成分が含まれることが示唆された。

【試験責任者:東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)教授 石川正明】

ラットを用いたアジュバント関節炎モデル(AIA)試験

目的

ラットを用いたアジュバント誘発関節炎(adjuvant-induced arthritis; AIA)モデルは、長年用いられてきた動物関節炎モデルであり、関節部位の腫張、関節軟骨の破壊などの症状が、ヒトの関節リウマチに類似しており、新薬の臨床前評価に多用されている。本試験ではAIAによって、光合成細菌RAP99菌体の経口摂取による抗リウマチ作用、抗炎症作用を評価した。

 

使用薬物及び動物

結核菌(Mycobacterium butyricum、Lot 0640-33、Difco)、流動パラフィン(保栄化学)およびインドメタシン(Sigma)は、和光純薬から購入して使用した。また、ラットは5週令のWistar系雄性(日本エスエルシー社製、150~160g)を1群5匹用いた。動物実験は、東北薬科大学動物実験ガイドラインに従って行った。

試料と方法

流動パラフィン0.1mLに結核菌0.6mgを懸濁し、コンプリートアジュバンドを調製し、ラットの左側後肢足蹠内に0.1 mL接種した。光合成細菌RAP99菌体試料(20 mg/kg/day)あるいはインドメタシン(0.1 mg/kg/day)はコンプリートアジュバントの接種日から1日1回、21日間連続経口投与した。足容種はコンプリートアジュバント接種後、所定の時間に Volume Meter MK-550 (Muromachi Kikai Co.Ltd, Tokyo Japan)で測定した。陽性対照としてインドメタシンを経口投与した。

光合成細菌RAP99菌体試料によるアジュバント誘発関節炎(AIA)試験

図1 光合成細菌RAP99菌体試料によるアジュバント誘発関節炎(AIA)試験

結果・考察

無処置群(complete adjuvantのみ投与)では、処置3日目に一次炎症とその後の二次炎症反応が観察された。光合成細菌RAP99菌体の経口投与 (20 mg/kg/day)により、一次炎症(3日)に対する効果は観察されなかったが、二次炎症(17日及び 21日)に対する抑制作用が観察された。

インドメタシン(0.1 mg/kg/day)は、一次炎症及び二次炎症のいずれに対しても抑制作用を示した。

光合成細菌RAP99菌体は、炎症を引き起こす起炎性刺激が、すでに存在している進行性の炎症過程に対する抑制は認められなかったが、コンプリートアジュバントが接種された後で免疫が関与した起炎性刺激の発生に対しては抑制的に作用し、炎症誘発作用を減弱させていることが考えられる。

ラットアジュバント誘発関節炎モデル(AIA)は、関節リウマチの実験病態モデルとして広く用いられていることから、光合成細菌RAP99菌体の経口投与による骨病変の改善は、慢性関節リウマチなどの骨破壊を伴う慢性疾患に有用と考えられる。

【試験責任者:東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)教授 石川正明】

マウスを用いたデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎抑制試験

目的

本試験では、マウスを用いたデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患モデル試験を行ない、炎症性腸疾患に対する光合成細菌RAP99菌体の効果を組織学的に評価した。

 

使用薬物及び動物

デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)は、ICN Biomedicals 社のdextran sulfate sodium salt (MW 36,000-50,000) を和光純薬から購入して使用した。5週令のICR系雌性マウスをSLC (日本エスエルシー, 静岡) から購入した。動物実験は、東北薬科大学動物実験ガイドラインに従って行った。

試料と方法

1群5匹のマウスに、光合成細菌RAP99菌体を0.1%含有するマウス飼育用粉末飼料(日本クレア、CF-2)を摂取させた。0.1% 光合成細菌RAP99菌体含有飼料の摂取を始めてから4週間後より、5%-DSS を給水ビンで自由摂取させた。8日後に結腸部を摘出し10%ホルマリン液で固定した。

0.1% 光合成細菌RAP99菌体含有飼料は5%-DSS投与期間中も摂取させた。(株)札幌総合病理研究所で、常法により切り出し、パラフィン包埋、薄切、HE染色後組織学的検索を行った。

 

表1 各マウスの組織学的評価

表1 各マウスの組織学的評価

-:negative ±:minimal +:mild ++:moderate +++:marked

図1 潰瘍形成スコア

図1 潰瘍形成スコア

図2 再生上皮スコア

図2 再生上皮スコア

対照区(5%-DSS)
識別番号:1
臓器:結腸
所見:潰瘍(+++)
再生上皮(±)

図3 対照の結腸組織染色画像

光合成細菌RAP99 0.1%
識別番号:2
臓器:結腸
所見:潰瘍(±)
再生上皮(+++)

図4 光合成細菌RAP99菌体摂取マウスの結腸組織染色画像

結果・考察

表1に試験に用いたマウスの各個体の評価結果、図1には潰瘍形成の評価スコア、図2には再生上皮形成発現の評価スコア、図3には対照群識別番号3の結腸組織染色画像、図4には光合成細菌RAP99菌体摂取群識別番号2の結腸組織染色画像を各々示す。

表1では5例とも高度の再生上皮を示し、3例では潰瘍の縮小傾向が明らかであり、潰瘍の修復所見と考えられた。得られた結果より、光合成細菌RAP99菌体は結腸細胞の修復活性を高めることを示唆していると考えられる。

【試験責任者:東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)教授 石川正明】

卵白アルブミン誘発アレルギー試験を用いたTh1/Th2インバランス是正確認試験

目的

本試験では、卵アルブミン誘発アレルギー試験を用いた試験により、光合成細菌RAP99菌体試料をマウスに経口投与し、卵アルブミンによるアレルギー反応におけるTh1/Th2バランスに与える影響を評価することを目的とした。

試料と方法

(1)光合成細菌RAP99菌体試料の調整

マウス飼育用粉末飼料(日本クレア社製、CF-2)に、0.1重量%の割合で光合成細菌RAP99菌体の凍結乾燥粉末を加え、菌体含有飼料を調製した。

(2)血清中IgE測定

生理食塩水0.2mLに卵アルブミン(grade V、シグマ社製)2mgを溶解後、水酸化アルミニウムゲル(No.019-19501 Lot WKJ4431、和光純薬社製)2mgを加えて懸濁させ、卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲルを調製した。

経口投与試験には、4週令のBALB/c系雌性マウス(日本エスエルシー社製)5匹を用いた。前記各マウスに、前記菌体粉末10 mg/kg, p.o.を、1日1回、2週間投与した。そして、光合成細菌RAP99菌体試料の最終投与日に、卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲルを腹腔内に投与した。

さらに、前述の最終投与日から10日後に追加免疫を行い、追加免疫から1週間後に採血した。採取した血液から血清を回収し、ELISA Kit(Bethyl Laboratories社製)のプロトコールに従い、前記血清中のIgE量を測定し、5匹の平均値を算出した。

(3)血清中IL-4測定

この測定では、4週令のBALB/c系雌性マウス(日本エスエルシー社製)2匹を用いた以外は、前述の血清中IgE量測定と同様にして、光合成細菌RAP99菌体試料を経口投与、また卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲルを調製して腹腔内投与し、採血した。

そして、採取した血液から血清を回収し、IL-4、マウス、ELISA Kit(96ウェル、Bethyl Laboratories社製)のプロトコールに従い、血清中のIL-4量を測定し、2匹の平均値を算出した。

(4) 脾臓細胞の培養上清中サイトカイン量測定

この測定では、4週令のBALB/c系雌性マウス(日本エスエルシー社製)3匹を用いた以外は、前述の血清中IgE量測定と同様にして、光合成細菌RAP99菌体試料を経口投与し、卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲルを調製して腹腔内投与した。

そして、追加免疫から1週間後に脾臓を摘出した。脾臓細胞及び卵アルブミン100μg/mLを添加したRPMI 1640培地(Gibco Laboratories社製)中に5×106細胞/mLの密度に懸濁し、空気95%、二酸化炭素濃度5%、37℃条件下で3日間培養した。

培養終了後、培養上清を回収し、ELISA Kit(Bethyl Laboratories社製)のプロトコールに従い、上清中のIFN-γ、IL-2、IL-4およびIL-5量を測定し、3匹の平均値を算出した。

結果・考察

(1) 血清中IgE測定結果

図1に血清中のIgE量の測定結果を示す。光合成細菌RAP99菌体試料を経口投与したマウスでは、未投与のマウスに比べ血清中のIgE量が低減した。

図1 マウス血清中のIgE量

図1 光合成細菌RAP99菌体試料によるアジュバント誘発関節炎(AIA)試験

 

(2) 血清中IL-4測定結果

図2に血清中のIL-4量の測定結果を示す。光合成細菌RAP99菌体試料を経口投与したマウスでは、未投与のマウスに比べ血清中のIL-4量が低減した。

図2 マウス血清中のIL-4量

 

(3) 脾臓細胞の培養上清中サイトカイン量測定結果

図3~6に、マウスの脾臓細胞の培養上清中のIFN-γ、IL-2、IL-4及びIL-5量の測定結果を示す。光合成細菌RAP99菌体試料を経口投与したマウスでは、未投与のマウスに比べ、Th1型サイトカインのIFN-γおよびIL-2量が増加し、Th2型サイトカインのIL-4およびIL-5量が減少した。

図3 マウス脾臓細胞の培養上清中のIFN-γ

図3 マウス脾臓細胞の培養上清中のIFN-γ

図4 マウス脾臓細胞の培養上清中のIL-2

図4 マウス脾臓細胞の培養上清中のIL-2

図5 マウス脾臓細胞の培養上清中のIL-4

図5 マウス脾臓細胞の培養上清中のIL-4

図6 マウス脾臓細胞の培養上清中のIL-5

図6 マウス脾臓細胞の培養上清中のIL-5

(4) 考察

アレルギー反応は、Th2優位により惹起される。前述の血清試料を用いた(1)及び(2)の結果から、IgE量が抑制され、さらにTh2型サイトカインであるIL-4量が抑制されたことから、光合成細菌RAP99菌体試料の経口摂取により、Th2型サイトカインの分泌を抑制し、アレルギー反応を惹起するTh1/Th2のインバランスを改善することが示唆された。

(3)の脾臓細胞培養試料を用いた結果においても、光合成細菌RAP99菌体の経口摂取により、Th2型サイトカインの分泌が抑制される結果として、Th1/Th2のインバランスを改善し、抗アレルギー作用を示すことが示唆された。

【試験責任者:東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)教授 石川正明】

マウスを用いたヒスタミン遊離量の評価

目的

卵アルブミン誘発アレルギー試験を用いた試験により、光合成細菌RAP99菌体試料をマウスに経口投与した後、血清中のIgE及びIL-4量、脾臓細胞の上清中のIFN-γ、IL-2、IL-4及びIL-5量を分析したところ、抗アレルギー反応が認められた。そこで、本試験では、体内でアレルギー反応を引き起こす物質のひとつであるヒスタミンについて、光合成細菌RAP99菌体の経口摂取による影響を、卵アルブミン誘発アレルギー試験によって評価することを目的とした。

試料と方法

(1)光合成細菌RAP99菌体試料の調整

マウス飼育用粉末飼料(日本クレア社製、CF-2)に、0.1重量%の割合で光合成細菌RAP99菌体の凍結乾燥粉末を加え、菌体含有飼料を調製した。

 

(2) 卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲルの調製

生理食塩水0.2mLに卵アルブミン(grade V、シグマ社製)2mgを溶解後、水酸化アルミニウムゲル(No.019-19501 Lot WKJ4431、和光純薬社製)2mgを加えて懸濁させ、卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲルを調製した。

 

(3)光合成細菌RAP99菌体の投与有群

経口投与試験には、4週令のBALB/c系雌性マウス(日本エスエルシー社製)19匹を用いた。各マウスに、光合成細菌RAP99菌体試料溶液10 mg/kg, p.o.を、1日1回、2週間投与した。そして、光合成細菌RAP99菌体試料の最終投与日に、卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲルを腹腔内に投与した後に採血した。採取した血液から血清を回収し、ELISA Kit(Bethyl Laboratories社製)のプロトコールに従い、前記血清中のヒスタミン量を測定し、19匹の平均値を算出した。

 

(4) 光合成細菌RAP99菌体の投与無群

光合成細菌RAP99菌体の投与無群では、前述のマウス15匹を用い、光合成細菌RAP99菌体試料を経口投与しなかった以外は同様にして試験を行い、血清中のヒスタミン量を測定し、平均値を算出した。この群については、前述の光合成細菌RAP99菌体の投与有群と比較して光合成細菌RAP99菌体を経口摂取したことによる、ヒスタミン遊離量の増減を評価する。また、後述の対照群と比較して、アレルギー反応が発現していることを確認する。

 

(5) 対照群

対照群では、前述のマウス13匹を用い、卵アルブミン/水酸化アルミニウムゲル及び光合成細菌RAP99菌体試料を経口投与しなかった以外は同様にして経口投与試験を行い、血清中のヒスタミン量を測定し、平均値を算出した。

結果・考察

図1 マウス血清中のヒスタミン量

図1 マウス血清中のヒスタミン量

(1) 血清中ヒスタミン測定結果

図1に血清中のヒスタミン量の測定結果を示す。

(2) 考察

対照群と光合成細菌RAP99菌体の投与無群を比較すると、後者の方がヒスタミンの遊離量が多く、アレルギー反応が誘発されていることが確認された。

光合成細菌RAP99菌体の投与無群と光合成細菌RAP99菌体の投与有群を比較すると、前者に比べて後者のヒスタミンの遊離量が低減した。よって、光合成細菌RAP99菌体試料の経口投与による、ヒスタミン遊離の抑制が確認された。この結果は、先に行われた血清中のIgE及びIL-4量、脾臓細胞の上清中のIFN-γ、IL-2、IL-4及びIL-5量の評価結果と符合する。

【試験責任者:東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)教授 石川正明】

ミクログリア細胞(C8-B4)のアミロイドβペプチドの貪食亢進効果の評価試験

目的

RAP99熱水抽出物と光合成細菌RAP99由来LPS(以下RAP99-LPS)における、ミクログリア細胞(C8-B4)のアミロイドβペプチドの貪食亢進活性を明らかにする。

試験の概要

試験の方法については、Michaudらの論文1)およびPickfordらの論文2)を参考とした。マウス小脳ミクログリア細胞株C8-B4細胞、RAP99熱水抽出物、RAP99-LPS試料を細胞培養液に添加して一定時間培養(~24時間)した後、蛍光色素HilyteTM Fluor 488で標識したヒトのアミロイドβ(1-42)を貪食させた。陽性対照として大腸菌由来のLPS、MPLAを使用した。

蛍光標識したヒトのアミロイドβ(1-42)を貪食したC8-B4細胞は蛍光色を呈するので、培養終了後、フローサイトメーターでC8-B4細胞の蛍光強度を測定した。そして、C8B4細胞全数のうち、アミロイドβ1-42を取り込んで蛍光色を呈した細胞の割合を貪食率として算出した。

試料と方法

(1)被験物質

①RAP99熱水抽出物の調製

RAP99を1.5mLのチューブに測りとり、サンプル20mg に対し、1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌したのち、ヒートブロック上(100℃)で20分間抽出を行った。抽出後、15000×gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

②RAP99-LPS

RAP99-LPSは注射用水(日本薬局方、株式会社大塚製薬工場)に2mg/mLになるように溶解し4℃で保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、990μLの培養液に10μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

(2)ミクログリア細胞株の調整と対照物質

①ミクログリア細胞株C8-B4

マウスのミクログリア細胞株C8-B4(ATCC No.CRL-2540)はATCCより凍結細胞を購入し、培養したものを用いた。当該細胞株C8-B4は、アミロイドβペプチドの貪食試験において、一般的に使用されている細胞株であることから選択した。ATCCより入手した凍結細胞の解凍および継代培養は細胞に添付の説明書に従って、後述のように実施した。

②C8-B4細胞の前培養

C8-B4細胞の凍結保存細胞を解凍し、週に1回の割合で新鮮な培地を用いて継代培養を行い、試験に供した。培地には、10%牛胎児血清(FBS、Moregate Biotech社)、100U/mLペニシリン(Invitrogen社)、及び100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen社)含有D-MEM(和光純薬工業株式会社)を用いた。

試験に使用する4日前にT75培養フラスコ当たり0.5×105cells/mL×20mLの割合で、試験に必要な細胞数に対応したT75培養フラスコ数で、C8-B4細胞を継代培養した。試験前日に、新鮮な培地への交換を行った。

試験当日、後述の通り90%以上の生存率を示し、且つ試験に必要な細胞数が得られたので試験を実施した。

③血液計算板による細胞数および生存率測定

トリパンブルー(和光純薬工業)250mgを、電子天秤を用いて秤量し、PBS(-)(和光純薬工業)を加え、C8-B4細胞染色用の0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液50mLを作成した。

細胞懸濁液の一部(100μL)を細胞数計測用に別の1.7mLプラスチックチューブに移した。細胞懸濁液20μLと等量(20μL)の0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液を混ぜ、血液計算板を用いて生細胞数および死細胞数を計測した。

細胞生存率(生細胞数/(生細胞数+死細胞数)×100)が90%以上の場合で、試験に必要な細胞数を満たしていたので試験に用いた。

(3)対照物質

①陰性対照物質

ミクログリア細胞株C8-B4を継代培養する際に用いた培養液を陰性対照とした。

②陽性対照物質

大腸菌R515株由来のモノホスホリルリピドA(以下、MPLAと表記)の原液を陽性対照物質として試験に用いた。MPLAについては、次の試薬を用いた。

MPLA from E.coli R515 (Re) TLRpureTM Sterile solution(Cat No.:IAX-100-003 lot. No.:B100613-100003 Date:10-June-2013 AdipoGen社)

(4)貪食活性試験

マウスC8-B4細胞を、2.5×105 cells/0.5mLの割合で24穴プレートの各ウェルに加えた後、各検体を含む2倍濃度の培養液を0.5mL加えた。37℃の5%CO2インキュベーター中で18時間前培養した。

ヒトのアミロイドβ(1-42)試料としては、AnaSpec社製の蛍光標識されたHiLyteTM Fluor 488アミロイドβ(1-42)を用いた。C8-B4細胞の前培養終了時に培養液を除き、Hilyte Fluor488アミロイドβ(1-42)を終濃度1μg/mL含有する培養液を添加し、3時間培養した。

培養後、アスピレーターを用いて上清を除き、ウェルに37℃に加温したPBS(-)を0.5mL加えて細胞を洗浄した。液はアスピレーターで除き、細胞に0.25%トリプシン、0.53mM EDTA含有PBS(-)を500μL加え、37℃にて10分間インキュベートした。

その後、血清を含む培養液を500μL加えてトリプシンの働きを止め、細胞を懸濁した後、1.5mLプラスチックチューブに移して1000rpmで5分間、遠心分離を行い、上清を、アスピレーターを用いて除いた。細胞の沈殿にPBS(-)を1mL加えて懸濁し、再度1000rpmで5分間、遠心分離を行った後、上清をアスピレーターで除いた。

細胞の沈殿に1%BSA、PBS(-)500μLを加えて細胞を懸濁し、フローサイトメーターを用いて貪食率を測定した。

(5)試験系の成立条件

試験の成立条件として、陽性対照として用いるMPLAのアミロイドβの貪食亢進が認められたので、成立条件を満たしていると判断した。

結果・考察

表1. 各被験物質におけるアミロイドβ貪食率

*蛍光強度101以上の細胞が占める割合
n=4の平均値と標準偏差

(1)結果

培養液のみの陰性対照群に比べて、MPLA 1μg/mL添加群では、有意に高いHilyte Fluor488 アミロイドβ(1-42)の貪食が認められた(図1、表1)。

検体のRAP99熱水抽出物群では、用量依存的な貪食率の上昇が認められた。10μg/mLと100μg/mLの群では有意に高い値を示した。RAP99-LPSでは、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mLの測定した3段階の用量のいずれにおいても有意に高い貪食率が認められた。なお、蛍光強度の中央値においても貪食率と同様の傾向が認められた。

以上の結果より、RAP99熱水抽出物およびRAP99-LPSはin vitroの試験において、ミクログリア細胞に働き、アミロイドβ(1-42)の貪食活性を高める効果を示すことが明らかになった。

図1 各被験物質におけるアミロイドβの貪食率

(2)考察

アルツハイマー病では、アミロイドβの脳内の増加が特徴として認められる。アルツハイマー病の予防として、アミロイドβの増加を防ぐ方法が求められており、アミロイドβの産生抑制とアミロイドβの脳内からの除去に関して研究が進められている。

アミロイドβの除去に関しては、脳内に存在するマクロファージ系細胞であるミクログリア細胞が、貪食によってアミロイドβを細胞内に取り込んで処理していることは報告されており、ミクログリア細胞のアミロイドβの貪食活性を高める方法が求められている。近年、菌体成分を用いてミクログリア細胞を活性化し、アミロイドβの貪食能を高めること、さらに病態の改善を示すことが報告された1)。

貪食を高めるメカニズムについては本試験では検討していないが、Pickfordらの報告2)では、貪食に際して、細胞をサイトカラシンDで前処理することでアミロイドβの貪食が抑制されることが述べられており、マクロピノサイトーシス による可能性が示唆されている。

また、別に、アミロイドβがミクログリア細胞の細胞表面上のTLRに結合するとの報告、あるいはミクログリアで、TLR2、TLR4またはCD14を欠損したものではアミロイドβにより活性化せず、貪食亢進が認められないとの報告事例がある。

さらに、トランスジェニックADマウスでTLR4を欠損しているものでは、アミロイドβの拡散と繊維状アミロイドβの上昇が認められるとの報告があり、貪食の活性化とアミロイドβの貪食にTLRが関与していることが示されている。TLRとは別に、アミロイドβの貪食にスカベンジャーレセプター、例えば、SR-AがADや高齢マウスで変化しているとの報告もある。

RAP99熱水抽出物およびRAP99-LPSのアミロイドβの貪食促進に関するメカニズムとしては、上記のTLRおよびSR-Aが働いている可能性が推定される。

【試験責任者:自然免疫応用技研株式会社】

【参考文献】
1) Michaud, JP. et al., Toll-like receptor 4 stimulation with the detoxified ligand monophosphoryl lipid A improves Alzheimer’s disease-related pathology, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110 (2013),1941-1946.

2) Pickford, F. et al., Progranulin Is a Chemoattractant for Microglia and Stimulates Their Endocytic Activity, Am. J. Pathol. 178 (2011), 284-295.

炎症性メディエーターNO(一酸化窒素)及びTNF-αに対する産生抑制試験

目的

炎症メディエーターである一酸化窒素(NO)とTNF-αを指標として調べることにより、光合成細菌RAP99菌体(以下RAP99)および光合成細菌RAP99由来LPS(以下RAP99-LPS)の抗炎症作用を評価する。

試料と方法

1.RAP99関連試料の作製

(1)RAP99-LPS

RAP99-LPSは注射用水(日本薬局方、株式会社大塚製薬工場)に2mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後のRAP99-LPS原液10μLに、次項2(2)で後述するRAW264.7細胞の培養液990μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

 

(2)RAP99熱水抽出物

RAP99の凍結乾燥粉体20mgを1.5mLのチューブに測りとり、1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌したのち、ヒートブロック上(100℃)で20分間抽出を行った。抽出後、15000×gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

 

(3)RAP99加水抽出物

RAP99の凍結乾燥粉体20mgを1.5mLのチューブに測りとり、1mLの蒸留水を加え、酸およびアルカリ処理を施したエンドトキシンフリーの無菌ガラスビーズを加え、ボルテックスミキサーで10分攪拌した。抽出後、15000×gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

 

2.マクロファージ細胞株

(1)RAW264.7細胞株

マウスマクロファージRAW264.7細胞株(No.TIB-71)はATCCより購入したものを用いた。当該細胞株は種々のマクロファージ活性化物質に対する感受性が高く、マクロファージ活性化能の試験に最も一般的に使用されている細胞株の一つである。

 

(2)培養液の調製

RAW264.7細胞の培養液を、RPMI1640培地(和光純薬工業):500mLに牛胎児血清(ハナ・ネスコバイオ)55.5mL、硫酸カナマイシン(ストレプトマイシン)0.11mL、アンピシリンナトリウム(ペニシリン)0.134mLを加えて調製した。調製した培養液は4℃にて保存した。

 

(3)細胞株の保存及び準備

入手した細胞は37℃に加温した液で急速解凍した。解凍した液を直ちに、新鮮な培養液を10mL加えた15mLコニカルチューブに移し、1000rpm(190×g)で5分間遠心分離を行なった後、デカント(容器を静かに傾ける操作)により上清を静かに廃棄した。

沈殿した細胞に、前項(2)で作製した培養液10mLを加え静かに懸濁し、液をT25培養フラスコに移した。T25培養フラスコを37℃の5%CO2インキュベーターで培養した。細胞が1×106cells/mL程度になった時点で、ピペッティングにより、壁に付着している細胞を剥がし、得られた細胞懸濁液の一部を用いて細胞数と生存率を計測した。

残りの細胞懸濁液を15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清をデカントにより廃棄した。細胞の沈殿をタッピングにより分散させた後、凍結保存用のセルバンカーを1×106cells/mLになるように加えて静かに懸濁し、1.0mLずつをセラムチューブに移した。細胞を入れたセラムチューブは予め冷蔵しておいたバイセルに入れ、-80℃で凍結保存した。凍結保存した細胞を戻したものを試験に供した。

 

3.対照物質

(1)陰性対照物質

前項2(2)で作成した培養液を陰性対照物質とした。

 

(2)陽性対照物質

グラム陰性菌の一種で小麦やサツマイモなどの植物の共生菌として知られるパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)より精製したLPS(以下LPSpと略記)を、陽性対照物質とした。用量は10000ng/mL、1000ng/mL、100 ng/mL、10 ng/mL、1 ng/mL、0.1 ng/mLおよび0.01ng/mLとした。

 

(3)陽性対照の調製方法

希釈操作は全てクリーンベンチ内にて実施した。LPSpは注射用水に2.5mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、992μLの培養液に8μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

 

4.細胞の生存率判定に用いる試薬の調製

(1)PBS(-)溶液

PBS(-)(シグマアルドリッチ)100mLに蒸留水を加えて1Lにした。121℃にて20分間、高圧蒸気滅菌を行い室温で保存した。

 

(2) 0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液

トリパンブルー(和光純薬工業)250mgにPBS(-)を加え50mLにした。この液5mLずつを15mLコニカルチューブに分注し、室温にて保存した。

 

5.NOアッセイ用試薬調製

Griess試薬については、3%(w/v) スルファニルアミド(シグマアルドリッチ)を含む7.5%リン酸(ナカライテスク)水溶液(I液)と、0.15%(w/v)ナフチルエチレンジアミン(ナカライテスク)水溶液(II液)をそれぞれ調製し、4℃にて保存した。試験時にはI液1に対してII液を2の割合で混合して用時調製した。

 

6.試験の流れ

試験の流れを図1に示す。RAW264.7細胞を、試験液で24時間前処理した後で培地を除いた。その後、無添加の培地、もしくはLPSpを添加した培地を加えて、さらに24時間培養を行い、培地中のNO産生量およびTNF量を測定した。これにより、RAW264.7細胞をRAP99で予め処理した後のLPSpによる炎症誘導能への影響を確認することができる。

図1 試験の流れ

 

7.RAW264.7細胞の前培養

RAW264.7細胞は、10%の牛胎児血清、100μg/mLペニシリン、ストレプトマイシンを含有するRPMI1640培地にて継代培養したものを用いた。培養はT25培養フラスコを用い、3日あるいは4日毎に0.5~1×105cells/mLで植え継いだ。37℃の5%CO2インキュベーター内で培養した。

 

8.共通部分の試験操作

試験操作は全てクリーンベンチ内で行った。

 

(1)T75培養フラスコ4本にて前培養したRAW264.7細胞をピペッティングにより壁から剥がし、得られた細胞の懸濁液を50mLコニカルチューブに移した。チューブを室温で1000rpm(190×g)、5分間遠心分離を行い、上清をデカントで捨て、細胞をペレットとして回収した。

 

(2)タッピングにより細胞をほぐした後、細胞ペレットに培養液5mLを加え、ピペッティングによって細胞を均一に懸濁した後、11μLを別のチューブに移し0.5%トリパンブルーを添加した後、血液計算板に液を移して細胞数と生存率を測定した。

生存率(トリパンブルーで核が染色されない細胞を生細胞、核が青く染色される細胞を死細胞として、生細胞/(生細胞数+死細胞数)×100を算出)が、90%以上(94%)であったので、残液を試験に用いた。

 

(3)測定した細胞数に基づいて、残液に培養液を加えて細胞数が4×105cells/mLになるよう調製した。得られた細胞懸濁液を100μLずつ96well平底プレート4枚の各ウェルに加え37℃の5%CO2インキュベーターで、細胞がウェルの底に接着して伸展するまで2時間前培養を行った。

 

(4)被験液は、終濃度の2倍濃度のものを調製した。具体的には、熱水抽出サンプルおよび水抽出サンプルは200μg/mL、20μg/mL、6μg/mL、2μg/mLおよび 0.6μg/mLの計5段階の用量を作製し、予めRAW 264.7細胞(4×105cells/mL)100μLを播種してあるウェルに100μLずつ加えた。

LPSpおよびRAP99-LPSの群では、培地に添加した際10μg/mL、1μg/mL、100 ng/mL、10 ng/mL、1 ng/mLおよび0.1 ng/mLとなるように調製した。各検体を添加後、24時間培養し、培養上清150μLを回収した。

 

(5)上清を回収したのち、被検物質を含まない培地を200μL加え1000rpm(190×g)で5分間遠心分離を行った。上清200μLを取り除く作業を2回繰り返し、被験液を希釈したのち、LPSp無添加の培地もしくはLPSp 1.33ng/mLを含む培地を150μL加え、CO2インキュベーター中で24時間インキュベートを行った。

 

(6)各ウェルから培養上清50μLを96穴平底プレートに移しNO測定およびTNF-α測定に用いた。測定方法は次項に記載する。

 

9.NO産生量の測定

(1)検量線用スタンダードの調製

200μMの亜硝酸ナトリウム水溶液を以下の割合で混合し、亜硝酸塩(以下NO2と表記)の標準液を調製して検量線を作成した。

(2)検量線用NO2標準溶液を各50μlずつ、対応するウェルに加えた。

 

(3)Griess試薬の調製

前述したように、3%スルファニルアミド7.5%リン酸水溶液と0.15%ナフチルエチレンジアミン液を1:2の比率で用時調製した。

 

(4)調製したGriess試薬を各ウェル当たり50μLずつ加え10分間室温でインキュベートした後、主波長550nm、副波長668nmの吸光度を測定した。

 

(5)各吸光度値より算出されたNO2値より、陰性対照と陽性対照の値を比較して、陽性対照が陰性対照の2倍以上の値であることを確認した。

 

10.TNF-α ELISA測定

Biolgend mouse TNF-α測定キットの取扱説明書に従った。サンプルは40倍希釈で測定を行った。

 

11.試験系の成立条件

(1)NO測定

試験の成立条件として、陽性対照のGriessの方法によって測定したNO2量が、陰性対照値のそれに比較して有意に高い値を示すこと、および雑菌の混入などの異常が認められなかったため、試験が適切に実施されたものと判断した。

 

(2)TNF-α測定

培地のみを加え24時間処理を行ったのち、LPSpを含まない培地で処理した試験群でTNF-αの産生がほぼ認められず、かつ、LPSpを含む培地の試験群でTNF-αが産生していた場合、問題なく試験が行われたと判断した。本試験ではこの条件を満たしており、試験は適切に行われたと考えられた。

結果・考察

1.NO産生

(1)結果の図示

RAP99菌体粉末およびRAP99-LPSで前処理した後に、LPSpを培養液に加えた際のRAW264.7細胞のNO産生に対する影響について調べた。結果を図2~5に示した。

前処理として培養液のみ(0ng/mL)を用い、24時間後にLPSpを加えた試験群が産生したNO2量(NO産生の指標として培養液中でNOの安定な代謝物であるNO2を測定)を100%として、他の群と比較を行なった。

図2 LPSp処理群のNO産生量

図2 LPSp処理群のNO産生量

図3 RAP99-LPS処理群のNO産生量

図3 RAP99-LPS処理群のNO産生量

図4 RAP99熱水抽出物処理群のNO産生量

図4 RAP99熱水抽出物処理群のNO産生量

図5 RAP99加水抽出物処理群のNO産生量

図5 RAP99加水抽出物処理群のNO産生量

(2)陽性対照LPSpの結果

陽性対照に用いたLPSpで前処理した試験群では、10ng/mL~10,000ng/mLの範囲で用量依存的なNO2産生量の上昇が認められた。

 

(3)RAP99関連被験物質の結果

RAP99-LPS では0.01ng/mL~10ng/mLまでの範囲におけるNO2産生量は、陰性対照(RAP99-LPS 0ng/mL)とほぼ同様な傾向を示した。しかし、10ng/mL~10000ng/mLの範囲では、陽性対照(LPSp)と同様な用量依存的なNO2産生量の上昇は認められず、著明な産生抑制傾向が認められた。

RAP99熱水抽出試料では、0.1~0.3µg/mLにおけるNO2産生量の上昇傾向は認められなかったが、3μg/mL以上では、著明に高いNO2産生量を示した。

RAP99加水抽出試料では、0.1~1µg/mLまではNO2産生量の上昇傾向は認められなかったが、3µg/mL以上では著明に高いNO2産生量を示した。

以上のNO産生を指標とした抗炎症効果試験より、RAP99-LPSでは高いNO2産生量抑制効果を示すことが認められた。RAP99菌体試料からの抽出物では、今回の測定条件ではNO2産生量の有意な抑制効果は認められなかった。

 

(4)RAP99-LPSとRAP99抽出物との比較

RAP99-LPSとRAP99抽出物との傾向について比較すると、RAP99抽出物の中に含まれるLPS濃度がわかると、抽出物とLPS単独の場合の比較から有効な情報を得られる可能性が高いと考えられる。

RAP99-LPSでは、100ng/mLにおいて、有意なNO2値の低下が認められているのに対して、熱水抽出液の1µg/mL群では、抑制は認められないことにより、LPS以外の成分の影響がより強く出ているものと推定される。

可能性がある成分としては、LPS以外のTLRリガンドが考えられる。たとえば、TLR9と3のリガンドである核酸(DNA、RNA)、TLR5のリガンドである鞭毛の構成成分であるフラジェリンというタンパク質、TLR2のリガンドであるペプチドグリカンなどが挙げられる。

 

2.TNF-α産生

(1)結果の図示

RAW264.7細胞のTNF-αの産生量(pg/mL)を図6~9に示した。

図6 LPSp処理群のTNF-α産生量

図6 LPSp処理群のTNF-α産生量

図7 RAP99-LPS処理群のTNF-α産生量

図7 RAP99-LPS処理群のTNF-α産生量

図8 RAP99熱水抽出物処理群のTNF-α産生量

図8 RAP99熱水抽出物処理群のTNF-α産生量

図9 RAP99加水抽出物処理群のTNF-α産生量

図9 RAP99加水抽出物処理群のTNF-α産生量

(2)陽性対照LPSp

0.01~100ng/mLでは用量依存的に、TNF-αの産生量が減少したが、1000~10000ng/mLでは上昇に転じた。

 

(3)RAP99-LPS

RAP99-LPSでは、10ng/mL以上でTNF-αの産生を用量依存的に有意に抑える結果となった。また、LPSpに対しRAP99-LPSは、TNF-αの産生を低下させ始める用量が高い、すなわち他のサンプルに比べ抗炎症効果が現れる用量が高いことが示唆された。

また、0ng/mLのときの産生量と比較すると、LPSpにおいては100ng/mLにおいて最大40%程度までの抑制が認められたが、RAP99-LPSでは10000ng/mLにおいて10%程度まで抑制しており、より高いTNF-α産生量抑制効果が示唆された。

 

(4) RAP99抽出物

RAP99熱水抽出物およびRAP99加水抽出物においても、TNF-αの産生量抑制による抗炎症作用があることが示唆された。0.3µg/mLの熱水抽出物と1µg/mLの加水抽出物のNO産生量はほぼ同等に抑制されていることから、RAP99熱水抽出物の方が加水抽出物に比べて、抗炎症効果を高める成分が高濃度に抽出されていることが示唆された。

その要因として、一般的にLPSは熱水により抽出されることや、RAP99-LPSが抑制効果を示していることから、RAP99熱水抽出物が、同加水抽出物に比べてRAP99-LPSをより多く含むためであると推測される。

RAP99熱水抽出では、RAP99菌体1gからの熱水抽出により、免疫機能に影響をもたらす生理活性成分としてLPS 5.6mg(Limulus測定)、核酸27.3mg、タンパク質51.2mgが得られたことがある。これらの合計収量が81.4mgであることを考慮すると、熱水抽出物における生理活性成分の実際の添加量は、その約1/10となる。つまり、RAP99熱水抽出液0.3µg/mLで処理した場合、熱水抽出物の生理活性成分の添加量は約0.03µg/mLと推定される。

 

(4)RAP99-LPSとRAP99抽出物との比較

RAP99-LPSとRAP99抽出物のTNF-α産生量について、0ng/mLのときの産生量と比較すると、30%の抑制率を示す用量は、RAP99-LPSでは100ng/mLであった。RAP99熱水抽出物では0.3µg/mLであり、RAP99加水抽出物では0.3~1µg/mLであった。

用量について比較すると、熱水抽出試料液中の生理活性成分の量は、前述したように、その濃度の約1割と推定できている。0.3µg/mL(300ng/mL)の場合、抽出された生理活性成分の合計量は30ng/mL程度と考えられ、30%までの抑制率ではRAP99-LPSの約1/3の量で、同程度の効果を示すことが推測される。

これらの抗炎症作用を示すメカニズムとしては、各リガンドに対するレセプターから、タンパク質の発現までの間に介在する、細胞内のシグナル伝達系の抑制が想定される。たとえば、NF-κBはこれらの経路における代表的な因子であることから、メカニズムを明らかにする際に、これら因子の動態を調べることにより重要な知見が得られると考えられる。

【試験責任者:自然免疫応用技研株式会社】

マウスのマクロファージ細胞由来のRAW263.7細胞に対するNF-κB抑制効果の評価試験

目的

光合成細菌RAP99菌体(以下RAP99)および光合成細菌RAP99由来LPS(以下RAP99-LPS)のNF-κB活性化抑制効果を明らかにして、それらの抗炎症作用の根拠について考察する。

試料と方法

1.被験物質

①RAP99:Rhodobacter azotoformans BP0899株の凍結乾燥粉体試料

②RAP99-LPS:RAP99から抽出、精製したリポ多糖(LPS)。

2.被験液の調製

(1)RAP99凍結乾燥菌体粉末熱水抽出物(以下RAP99熱水抽出物)

RAP99凍結乾菌体粉末を1.5mLのチューブに測りとり、20mg に対し1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌した。その後、ヒートブロック上で、100℃で20分間抽出を行った。抽出後、15000gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

(2)RAP99-LPS

RAP99-LPSは注射用水(日本薬局方、株式会社大塚製薬工場)に2mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを用いた。使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、990μLの生理食塩水に10μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。

(3)保存条件

被験液は用時調製とし、残液は破棄した。

3.試験材料

(1)RAW264.7細胞株

マウスマクロファージRAW264.7細胞株(No.TIB-71)はATCCより購入したものを用いた。当該細胞株は種々のマクロファージ活性化物質に対する感受性が高く、マクロファージ活性化能の試験に最も一般的に使用されている細胞株の一つであり、また、NF-κB活性化の研究に一般的に使用されている細胞株であるため選択した。

(2)RAW264.7細胞株の保存及び解凍

入手した細胞は37℃に加温した液で急速に解凍した。解凍した液を、新鮮な培養液を10mL加えた15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清をデカント(コニカルチューブを静かに傾ける所作)により捨てた。

細胞(沈殿)に培養液5mLを加え静かに懸濁し、液をT25培養フラスコに移した。37℃の5%CO2インキュベーターに移し培養した。細胞がコンフルエント(細胞が培養容器の接着面を覆いつくした状態)になった時点で、ピペッティングにより壁に付着している細胞を剥がし、得られた細胞懸濁液の一部を用いて細胞数と生存率を計測した。

残りの細胞懸濁液を15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清をデカントにより捨てた。細胞(沈殿)をタッピングにより崩し、細胞を分散させた後、凍結保存用のセルバンカーを1×106cells/mLになるように加え、静かに懸濁し、1.0mLずつをセラムチューブに移した。細胞を入れたセラムチューブは予め冷却しておいたバイセルに入れ、-80℃で凍結保存した。凍結保存した細胞を戻し継代培養中の細胞を本試験に用いた。

4.対照物質

(1)陰性対照物質

被験物質の溶解に用いた生理食塩水を陰性対照物質とした。

(2)陽性対照物質

小麦やサツマイモなどの植物との共生で知られるグラム陰性菌パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)より精製したLPS(以下、LPSpと略記)を陽性対照物質とした。用量は100ng/mLとした。なお、参考として1μg/mLおよび0.01μg/mLの用量でも実施した。

(3)調製方法

LPSpは注射用水に2.00mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを用いた。使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行なった。溶液10μLを990μLの新鮮な培養液に加え、よく攪拌し、20μg/mLのLPSp溶液を調製し、その後さらに培養液で希釈して終濃度の100倍希釈液を調製して試験に用いた。

5.試薬調製

(1)培養液の調製

10%FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン含有RPMI1640 をクリーンベンチ内で以下の割合で各試薬を混合し、作製した(4℃にて保存)。

RPMI1640 培地:500 mL

非働化FBS※:55.5 mL

ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×):液体 5.6mL

※非働化FBS:FBS(牛胎児血清)を56℃で30分間加熱処理し、分注して-20℃にて保存したものを使用した。非働化とは血清の補体成分を失活させる操作。

(2)PBS(-)溶液

PBS(-)9.6gを電子天秤を用いて秤量し、蒸留水を加えて1Lとした。121℃にて20分間、高圧蒸気滅菌を行い室温で保存してあるものを用いた。

(3)0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液

トリパンブルー250mgを、電子天秤を用いて秤量し、PBS(-)を加え50mLとした。液は、5mLずつに15mLコニカルチューブに分注し室温にて保存してあるものを用いた。

6.試験方法

(1)概略および操作

①RAW264.7細胞の前培養

RAW264.7細胞は、5-(1)項で調製した培地にて継代培養したものを用いた。培養はT25培養フラスコを用い、3日ないし4日毎に0.5~1×105cells/mLで植え継いた。試験用にT75培養フラスコ4枚に細胞を播種し、37℃の5%CO2 インキュベーター内で培養した。

②検体処理細胞抽出液の調製

RAW264.7細胞は、T75培養フラスコで培養し、4本を試験に用いた。細胞をピペッティングにより剥がし、50mLコニカルチューブに回収した。遠心分離(1000rpm、5分間)を行い、細胞を沈殿として回収し、タッピングにより細胞を分散させた。培養液を10mL加えよく混ぜ、再度遠心分離(1000rpm、5分間)を行い、細胞を回収した。細胞に培養液を10mL加え、ピペッティングにより細胞を分散・懸濁させてから、一部をサンプリングして細胞数と生存率を測定した。

細胞を1.067×106cells/mLに培養液を加えて希釈し、6穴プレートの1ウェル当たり3.0mLずつ加えた(3.2×106cells/3mL/ウェル)。37℃、5% CO2インキュベーターで、2時間インキュベートし、細胞をウェルの壁に付着させた。2時間後、100倍濃度の各サンプルを1ウェルあたり30μLずつ加えた。

各サンプルが入った培養液を添加後、37℃、5% CO2インキュベーターで、24時間インキュベートした後、培養液を15mLチューブに回収した。培養液を回収した後のウェルに37℃で加温した新鮮な培養液を1mL加えてウェル全体に行き渡らせた後、この培養液も同じチューブに回収した。再度、1mLの培養液をウェルに加えて同様に培養液を回収した。その後、ウェルに加温した培養液を1mL加えた。

培養液を遠心分離(1000rpm、3分間)し、上清をデカント(容器を静かに傾ける操作)によって捨てた後、新鮮な培養液を3mL加えて細胞を懸濁させ、再度遠心分離を行なった。その後、上清をデカントによって捨て、新鮮な培養液を2mL加えて細胞を懸濁し、もとのウェルに戻した。

細胞懸濁液に、LPSpを終濃度100ng/mLになるように、100倍濃度の10μg/mLのLPSpを含む培養液を30μL加えてよく混ぜ、30分間、37℃、5% CO2インキュベーターで、インキュベートした。その後、培養液を15mLチューブ回収して遠心分離し、培養上清をアスピレーターで除いた。氷冷したPBS液3mLを、培養液を除いたウェルに加えてピペッティングにより細胞を剥がし、細胞懸濁液を先ほどの15mLチューブに移した。

その後、1000rpm、3分間遠心分離し、上清をアスピレーターで除き、氷冷したPBS液を0.5mL加え、細胞を懸濁し、1.5mLチューブに細胞懸濁液を移した。以降の回収した細胞から核タンパクを抽出する操作は、Nuclear Extract kitに記載の方法に従った。

回収した細胞を、3000rpmで4℃、5分間マイクロ遠心分離機で遠心分離を行い、上清をアスピレーターで除き、細胞の沈殿に、氷冷した1×Hypotonic Bufferを250μl加え、ピペッティングにより懸濁した。

氷中で、15分間、インキュベートした後、洗浄液 12.5μLを加えて、ボルテックスミキサーにより10秒間 (最高の設定で)、攪拌して、30秒間 14,000×gで遠心分離した。上清 (cytoplasmic fraction) を別の氷冷した1.5mLチューブに移した (Cytosol extract、2本のチューブに分注した)。測定まで、-80℃にて保存した。

沈殿に、25μLのComplete lysis Bufferを加え、ボルテックスミキサーにより最高の設定で10秒間攪拌した後、30分間氷中でインキュベートした。その後、30秒間ボルテックスミックス(最高の設定で)し、4℃で、マイクロ遠心分離機により、12360rpm(14000×g)で、10分間遠心分離した。上清を氷冷した1.5mLチューブにピペットで移した(20μL 1本と残り~10μL程度1本)。直ちに、-80℃にて保存した。

③抽出液のタンパク定量

抽出液のタンパク定量はBradfordのCBB(クマシーブリリアントブルー)色素を用いた方法により、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準品として用いて測定した。測定は使用したCBB Protein assay Kitの説明書に従って実施した。

Nuclear extractは、蒸留水にて100倍希釈しプレートリーダーにてO.D.570nmで測定した。

④マウスNF-κB p65の定量

NF-κBの定量には、Trans AM NF-κB p65 Kitを用いた。測定は、キット付属の説明書に従って実施した。各サンプルについてn=1で測定した。核抽出液10μlを測定に用いた。得られた吸光度値について、タンパク定量の測定値に基づいて、Nuclear extract 100μg当たりの吸光度値を算出して群間比較した。なお、キット付属のPositive controlのNuclear extractは、指定の2.5μgを用いた。Extractの希釈液のみを添加したBlankも同時に測定した。測定原理の模式図を下図に示す(出典:キット説明書)。

(2)本試験用量の設定

RAP99熱水抽出物およびRAP99-LPSのRAW264.7細胞におけるNO産生およびTNF産生抑制試験の試験成績を参考にして、本試験での用量を決めた。

結果・考察

結果を図1、表1に示した。

培養液のみで24時間前処理した後LPSp 100ng/mLにて刺激した場合に、LPSp無刺激の場合と比較して約8倍高い値を示した(0.86±0.23→7.06±0.68)。この結果により、LPS刺激によりNF-κB p65が細胞質から核内に移行したことが示唆された。

陽性対照として用いたLPSpで前処理した場合では、用量依存的にNF-κB測定値が低下した。1ng/mLと100ng/mLでは、有意な低下が認められた。RAP99-LPSでは用量依存的な低下が有意に認められた。RAP99熱水抽出物では、3000ng/mLにおいて、有意に低い値を示した。

これまでの試験結果から、RAP99-LPSまたはRAP99熱水抽出物を前処理することで、その後のLPS刺激によるNO産生とTNF-α産生の抑制効果が認められている。この度の結果より、当該抑制効果を示す作用機序として、NF-κBを含むシグナル伝達系が関与しており、NF-κBの核内への移動が抑制されていることが、TNF-α産生やNO産生の抑制に繋がっていることが示唆された。

図1. RAP99熱水抽出物とRAP99-LPSの前処理によるRAW264.7細胞のLPSp刺激による核内NF-κB上昇の抑制効果の検討
図中のカラムとバーはn=3のデータの平均と標準偏差を示す。
図中の+と-は、前処理後のLPS刺激の有無を示す。

 

表1.RAP99熱水抽出物とRAP99-LPSの前処理によるRAW264.7細胞のLPSp刺激による核内NFκB上昇の抑制効果の検討

図2.にLPSレセプターのTLR4からのシグナル伝達の模式図を引用する1)。RAP99熱水抽出物、RAP99-LPSについてのNF-κBの核内への移動が抑制されサイトカイン産生等が抑制されるメカニズムについては、現時点ではわからないが、シグナル伝達に係る因子に対して抑制的に働く因子が誘導されたことによる可能性が考えられる。

図2 TLR3- and TLR4-mediated signaling pathways. TLR4 activates the MyD88-dependent and the Trif-dependent pathways. TIRAP/Mal and TRAM are required for the activation of MyD88- and Trif-dependent pathways, respectively. MyD88 recruits IRAK4 and TRAF6 upon ligand stimulation. TRAF6 activates TAK1/TAB1/TAB2/TAB3 complex via K63-linked ubiquitination (Ub). Activated TAK1 complex then activates the IKK complex consisting of IKKα, IKKβ and IKKγ/Nemo, which catalyze IκBs (P). IκBs are destroyed by the proteasome pathway, allowing NF-κB to translocate into nuclei. TAK1 simultaneously activates the MAP kinase pathway, which results in phosphorylation (P) and activation of AP-1. NF-κB and AP-1 control inflammatory responses by inducing proinflammatory cytokines. TLR4 also recruits TRAM and Trif, which interacts with TBK1. TBK1 together with IKKi mediates phosphorylation of IRF3 (P). Phosphorylated IRF3 is dimerized and translocated into nucleus to bind DNA. Trif also interacts with TRAF6 and RIP1, which mediate NF-κB activation. Activation of IRF3, NF-κB and AP-1 is required for induction of type I IFN, particularly IFNβ. TLR3, which resides in endosomal vesicles, utilizes Trif but not MyD88, TIRAP/Mal and TRAM for its signaling. MAPKs, MAP kinases

【試験責任者:自然免疫応用技研株式会社】

【参考文献】
1) T Kawai & S Akira, TLR signaling, Cell Death & Differentiation 13, 816–825(2006).

マウスを用いた四塩化炭素誘発肝障害試験

目的

光合成細菌(Rhodobacter azotoformans)RAP99凍結乾燥菌体粉末(以下、RAP99菌体粉末と略記)について、四塩化炭素(以下CTと略記)による肝障害誘発モデルマウスを用いた経口投与試験を行い、肝障害予防効果、及びその組織学的な評価を行う目的で実施した。

試料と方法

1.RAP99混餌試料の調製
マウス飼育用粉末飼料(日本クレア社製、CF-2)に、0.1重量%の割合でRAP99菌体粉末を加え、RAP99混餌飼料を調製した。

2.CT投与量に応じた予防効果
(1)投与方法
5週齢のICR系雌性マウス(日本エスエルシー社製)3群(各群3匹)を用いた。これらの各群のマウスに、RAP99菌体粉末を10mg/kg, p.o.、1日1回、7日間投与した。その後、肝障害を誘発させるため、最終投与24時間後に、所定量(20、100、および500mg/kg, p.o.)のCT(和光純薬社製)を、前述の各群のマウスに投与した。

(2)採血及びGOT活性の測定
CT投与24時間後にマウスの血液を採取してGOT値(カルメン単位)を測定、各群のGOT平均値を算出した。また、対照群として、混餌試料およびCTを経口投与しなかった以外は各群と同様にして、血液中のGOT活性を測定して平均値を算出した。そして、下記式(1)を用いて、前記各群のGOT相対活性値を算出した。
GOT相対活性値(%)=(各群のGOT平均値)/(対照群のGOT平均値)×100…(1)

(3)コントロール
5週令のICR系雌性マウス(日本エスエルシー社製)3匹を用い、RAP99菌体粉末を経口投与しなかった以外は、RAP99菌体粉末を投与した群と同様にして試験を行い、GOT相対活性値を算出した。

3.RAP99菌体粉末投与量に応じた予防効果
(1)投与方法
5週齢ICR系雌性マウス(日本エスエルシー社製)3群(各群3匹)を用いた。各群に、所定量(3、6および10mg/kg, p.o.)のRAP99菌体粉末を、1日1回、7日間投与した。そして、肝障害を誘発させるため、最終投与24時間後に、CTを100 mg/kg, p.o.)を投与した。

(2)採血及びGOT活性の測定
CT投与24時間後に血液を採取してGOT値(カルメン単位)を測定し、各群のGOT平均値を算出した。また、対照群として、前記菌体粉末および前記四塩化炭素を経口投与しなかった以外は前記菌体粉末投与群と同様にして、血液中のGOT活性を測定し、GOT平均値を算出した。そして、実施例4と同様にして、前記各群のGOT相対活性値を算出した。

(3)対照群
5週令のICR系雌性マウス(日本エスエルシー社製)3匹を用い、RAP99菌体粉末を経口投与しなかった以外は、RAP99菌体粉末を投与した群と同様にして試験を行い、GOT相対活性値を算出した。

4.肝細胞壊死および炎症細胞浸潤に関する組織学的評価
(1)投与方法
RAP99菌体粉末10mg/kg, p.o.を、1日1回、1日間または7日間投与し、最終投与24時間後に、CTを100 mg/kg, p.o.投与した以外は、第3項で述べた「RAP99菌体粉末投与量に応じた予防効果試験」と同様に試験を行なった。

(2)対照群と比較群
RAP99菌体粉末及びCTを両方とも経口投与しない群(3匹)を対照群とした。一方、RAP99菌体粉末を経口投与しなかった以外は、CTを経口投与するなど、4(1)項と同様にして試験を行う群(3匹)を比較群とした。

(3)組織学的評価
CT投与24時間後に肝臓を摘出した。摘出した肝臓を10v/v%ホルマリン液で固定、常法によりパラフィン薄片を作製した。ヘマトキシリン染色後、光学顕微鏡を用いて組織学的に観察した。

結果と考察

1.CT投与量に応じた予防効果
試験の結果、得られたGOT相対活性値(%)を表1及び図1に示す。試験群は対照群に比べ、GOT活性が約1/2倍に抑制され、肝障害抑制効果が認められた。また、試験群においては、7日間にわたり、RAP99菌体粉末10mg/kg, p.o.を投与したが、副作用は認められなかった。

 

表1 各CT投与量におけるGOT相対活性値(%)

( )内の数字は、血液中のGOT測定値の平均値

図1 各CT投与量におけるGOT相対活性値(%)

 

2.RAP99投与量に応じた予防効果

試験の結果、得られたGOT相対活性値(%)を表3及び図2に示す。表2及び図2に示すように、RAP99菌体粉末3~10mg/kg, p.o.を投与した試験群は対照群に比べ、GOT相対活性値が抑制され、肝障害抑制効果が認められた。また、試験群において7日間にわたり、RAP99菌体粉末3~10mg/kg, p.o.を投与したが、副作用は認められなかった。

 

表2 各RAP99菌体粉末投与量におけるGOT相対活性値(%)

( )内の数字は、血液中のGOT測定値の平均値
対照群は、RAP99菌体粉末およびCTの投与無し

図2 各RAP99菌体粉末投与量におけるGOT相対活性値(%)

 

3.肝細胞壊死および炎症細胞浸潤に関する組織学的評価

肝臓の小葉中心性の肝細胞壊死および炎症細胞浸潤の組織学的所見スコアの平均値を、表3及び図3に示す。また、組織学的所見スコアの評価の基準を表4に示す。

表3及び図3に示すように、RAP99菌体粉末投与群は、比較群よりも小葉中心性の肝細胞壊死および炎症細胞の浸潤が抑制された。すなわち、RAP99菌体粉末の事前経口投与により、四塩化炭素誘発性肝障害が抑制された。特に、肝細胞壊死については、RAP99菌体粉末の投与が無かった比較群と比べて、RAP99菌体粉末の投与を1日間受けた群では約2/3に、同じく7日間受けた群では約1/3の組織学的な評価値となった。

また、投与1日群よりも、投与7日群の方のスコア数値が低く、四塩化炭素誘発性肝障害が抑制された。これにより、より長期間RAP99菌体粉末の経口投与を受けた方が、肝障害抑制作用がより強く表れることが示唆された。さらに、RAP99菌体粉末を経口投与した試験群において、副作用は認められなかった。

 

表3 組織学的所見スコア

表4 組織学的所見スコアの基準

図3 組織学的所見スコア

 

結果・考察

これまで述べてきた一連の試験により、RAP99菌体粉末を予め経口投与することにより、CTによる肝障害を抑制する効果を確認できた。また、RAP99菌体粉末の経口投与期間が長いほど、CTによる肝障害抑制力が強くなることが示唆された。

さらに、組織学的な見地からは、肝細胞壊死が著明に抑制され、炎症細胞浸潤にも抑制効果が認められた。おそらくは、CTによって肝細胞が損傷を受けたとしても、壊死に至る前に回復し得た細胞が多数あり、その回復力はRAP99菌体粉末によってもたらされたと推測される。

【試験責任者:東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)教授 石川正明】