光合成細菌 RAP99 の抗疲労系試験(in vivo)

抗疲労系試験(in vivo)

マウスを用いた懸垂法による抗疲労試験

Ⅰ.実験1:10日間経口投与

目的

マウス懸垂法を用いて、光合成細菌RAP99菌体の経口摂取による抗疲労作用、及び疲労負荷に対する抗疲労作用を検討した。

使用動物

試験動物は4週令のddY系雄性マウス(日本エスエルシー社製)を用いた。試験方法は、体重の10重量%に相当する重りを後足に加重した状態で、水平に配置した懸垂用の棒に、マウスを前足で懸垂させ懸垂持続時間(秒)を測定する懸垂法を用いた。懸垂持続時間が40~60秒のマウスを予め選出した。動物実験は、東北薬科大学動物実験ガイドラインに従って行った。

試料と方法

1群10匹のマウスに、試料として光合成細菌RAP99菌体 10mg/kgを1日1回10日間経口投与した。試料は注射用生理食塩液に溶解して0.1 mL/10 gを投与した。試料投与11日後、1回目の懸垂持続時間 (1st stage) を測定した。さらに、疲労負荷試験として30分後に2回目の懸垂持続時間(2nd stage) を測定し、試料未処置群を対照群として比較検討した。

図1 光合成細菌RAP99菌試料の10日間経口投与による抗疲労作用

 

結果・考察

1) 今回抽出した懸垂持続時間が40~60秒のマウスにおける、懸垂持続時間は試料未処置群では48.9秒、試料処置群では48.3秒であった。

2)試料の10日間処置により、懸垂持続時間(1st stage)は39.2秒を示した。未処置群では31.4秒であり1.2倍の延長が認められた。

3)疲労負荷試験として、30分後に2回目の懸垂持続時間(2nd stage)を測定した時は36.8秒を示した。未処置群では17.2秒であり2.1倍の有意差がある延長が観察された。

以上の結果により、マウス懸垂法において、光合成細菌RAP99菌体 10 mg/kg(p.o.)/dayの10日間経口投与による抗疲労効果は疲労を負荷させたマウスにおいて著しく観察された。

 

Ⅱ.実験2:20日間経口投与

目的

先に実施した、光合成細菌RAP99菌体を10日間経口投与して抗疲労作用と疲労負荷に対する抗疲労作用を検討し、著明な抗疲労効果が観察されたので、さらに、投与期間を20日間に延長して検討した。

使用動物

実験1と同じ。

試料と方法

実験1と同じ。

図2 光合成細菌RAP99菌試料の20日間経口投与による抗疲労作用

結果・考察

1) 今回抽出した懸垂持続時間が40~60秒のマウスにおける、懸垂持続時間は49.7秒であった。

2)試料の20日間処置により、懸垂持続時間(1st stage)は68.2秒を示した。対照群では54.3秒であり1.2倍の延長が認められた。

3)疲労負荷試験として、30分後に2回目の懸垂持続時間(2nd stage)を測定した時は57.1秒を示した。対照群では26.8秒であり2.1倍の有意差がある延長が観察された。

以上により、マウス懸垂法において、光合成細菌RAP99菌体 10 mg/kg(p.o.)/dayの20日間経口投与による抗疲労効果が認められ、特に疲労を負荷させたマウスにおいて著しく観察された。

【試験責任者:東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)教授 石川正明】

水浸疲労ラットを用いた抗疲労試験

目的

本試験は、RAP99菌株の抗疲労効果を水浸疲労ラットの鉛負荷試験における水泳耐久時間を指標に検討することを目的とした。本試験は「株式会社鎌倉テクノサイエンス動物実験運用規定」に基づき、動物実験倫理委員会による倫理審査を経て、実施機関の長の承認を得た(倫理審査番号:16-034)。

要約

水浸用ケージ(水温23±1°C、水の高さ1.5 cm)でラットを5日間飼育し(図1)、疲労状態にした後に強制水泳(水温23±1°C、高さ:40 cm、直径:18 cm、水の高さ25 cm)を実施した(図2)。その結果、水浸用ケージ飼育群対照群(対照群)と比較し被験物質(RAP99菌)投与群では濃度依存的な水泳耐久時間の増加傾向が見られ、高濃度群(100 mg/kg)で有意な増加が認められた(対照群208.5 sec、低濃度群254.3 sec、中濃度群261.2 sec、および高濃度群284.0 sec、p<0.05、Williams検定)。また、体重推移を確認したところ、対照群と比較し被験物質投与群はどの濃度においても変化は見られなかった。

 

図1 水浸ケージのイメージ

図2 強制水泳

試料と方法

(1)RAP99菌体試料の調製

①投与液は用時調製した。

②溶媒は生理食塩水(日本薬局方生理食塩液、(株)大塚製薬工場)を使用した。

③秤量した被検物質に溶媒を必要量添加、ボルテクスミキサーにて攪拌した。

④20 mg/mL溶液を調製した後、溶媒を用いて2および0.6 mg/mL溶液になるよう適宜希釈した。

 

(2)使用動物

本試験で用いたラットのプロフィールは以下の通りである。

①種、微生物学的制御、系統及び性:ラット、SPF、Wistar、雄

②供給源:日本エスエルシー(株)

③動物管理番号:AC-013Ra

④入荷時週齢、匹数及び体重:6週齢、30匹、体重指定なし

⑤試験系選択の理由:抗疲労試験に汎用される動物種、且つ本試験で用いる被験物質RAP99の毒性試験を実施した系統を選択

 

(3)群分け

ラットは表1のように群分けした。

 

表1 ラットの群分け

(4)試験のスケジュール

試験は図3のようなスケジュールで実施した。

図3 試験のスケジュール

 

①群分け:前述したラットの群分けは試験開始日の前日に実施。

②経口投与:RAP99菌体試料溶液を、ディスポーザブル経口ゾンデ及びディスポーザブルシリンジを用いてラットに5日間強制経口投与した。

③経口投与終了後の翌日、試験開始後6日目に強制水泳試験を実施した。

④ラットの体重を試験開始日から6日間、毎日実施した。

 

(5)過労ラットの飼育

プラスチック製のケージの内部に、底から高さ1.5 cmの水(水温23±1°C)を入れた(以下、水浸ケージと表記)。ラットを水浸ケージで飼育すると、水が張ってあるために横臥できなくなる結果、ラットは睡眠できなくなる。このような不眠状態で5日間飼育して、ラットに過労負荷をかけた。

 

(6)強制水泳試験

強制水泳試験は、床敷ケージ飼育群および水浸ケージ飼育群共に試験開始6日目に実施した。 6日目に測定したラットの体重の8%の錘を尾根部に取り付けた後、室温で平衡化後23±1°Cに調整した水を張ったアクリル製円筒型水槽(高さ:40 cm、直径:18 cm、水の高さ25 cm)にラットを入れて強制水泳を実施し、ラットの鼻部が水面から10秒間沈むまでの時間(水泳耐久時間)を計測した。強制水泳終了後は水槽からラットを引き揚げ、体をタオルでふき取り休息させた後、ケージへ戻した。

結果・考察

(1) 水泳耐久時間

図4にラットの水泳耐久時間の測定結果を示す。

図4 ラットの水泳耐久時間

 

(2)試験成立の確認

床敷ケージ飼育群と水浸ケージ飼育群対照群(以下、対照群と表記)について、水泳耐久時間を比較すると、床敷ケージ飼育群が476.7秒であったのに対して対照群は208.5秒であり、統計学的に有意な減少が認められた(p<0.001)。したがって、水浸ケージで飼育したラットには過労負荷がかかっており、試験成立条件を満たしていると判断した。

 

(3)RAP99の抗疲労効果の確認

水泳耐久時間を比較すると、対照群が208.5 秒であったのに対して、低濃度群254.3 秒、中濃度群261.2 秒および高濃度群284.0 秒であった。このように、RAP99投与群は濃度依存的な水泳耐久時間の増加傾向が見られ、高濃度群にて統計学的に有意な差が認められた(p<0.05)。

 

(4)ラットの体重の推移

図5に本試験におけるラットの体重の推移、図6に試験初日と6日目におけるラットの体重差を示す。水浸ケージ飼育群において、対照群と被験物質投与群(低濃度、中濃度および高濃度)の体重を比較すると、全ての群にてDay2で大幅に減少した。その後微増するもDay6時点で投与前体重には戻らず、RAP99投与による体重への影響は認められなかった。

 

図5 ラットの体重の推移

 

図6 試験初日と6日目におけるラットの体重差

結論

水浸ケージ飼育群において、対照群と比較しRAP99投与群(低濃度、中濃度および高濃度)で濃度依存的な水泳耐久時間の増加傾向が見られ、高濃度群では有意な増加が認められた。また、体重推移を確認したところ、対照群と比較しRAP99投与群はどの濃度においても変化は見られなかった。以上の結果より、本評価系において、RAP99菌株(100 mg/kg)の経口投与による抗疲労効果が確認できた。

【試験責任者:株式会社鎌倉テクノサイエンス】